エロゲMAD大紀行 第一回

エロゲMAD大紀行 〜日なた猫編〜



みんなで広げようエロゲMADの輪。
エロゲMADは数少ない凋落の文化である。
グダったシナリオをポエムにて改変するもの、そこはかとないエロスを漂わせながら編集するもの、パンチラ部分の切抜きやおっぱい部分の描き足しに興奮するもの、その容態は多種多様であり、ガラパゴス諸島のゾウガメのように島ごとの進化を遂げたものが多くいる。

今日はそんなエロゲMAD作者にスポットを当てて記事を書いていこうと思う。
以下、敬称を省いて書く。


第一回は日なた猫というMAD作者である。
なぜ、このMAD作者を選んだかというと最近、私が岩合光明の世界猫歩きというNHKの番組にはまっており、HNに猫がつくMAD作者を記念すべき第一回にしようと考えたからだ。


早速だが、日なた猫がどういうMAD作者かというところから語っていきたい。
このMAD作者は現在、野良MAD製作所という団体に所属しており、同時に各種イベントを手がける、KAZAMI、朝奈、いざなぎといったエロゲ窓という団体にも所属している。


プレイするエロゲのジャンルは広いが、特にminori、purplesoft、戯画などシリアス系のややSFチックのエロゲを好む。
また、グリザイアシリーズなどを発売したフロントウィングなど、比較的ボリュームが大きいエロゲでMADを作ることが多い。


さて、私が日なた猫のMADを見たのは2010年-2011年と大体、大学1年生ぐらいで動画MADを作り始めて、zoomeで活動していた時期に当たる。
当時のzoomeは活気にあふれ、現在のニコニコと違いMADの新作が上がれば確実にランキングに入ってくる、また、動画ページにコメントを残せることからMAD作者界隈の間の交流の場となっていた。


少し脱線するが、zoome時代はいわゆる静止画MADというのはあまりなく大半を動画MADを占めていた。その理由としてはまだ、aviutlやniveといったフリーソフトでは開発途上で編集に限界があったこと、またモデリングソフトを使える技術を持ったものがいなかったり、VCのプラグインもほとんと発売されていない状況で静止画を動かして、1分超えの動画を作るということ自体に大きなハードルがあった。
中でもラノベMAD以上に少なかったのがエロゲMADだ。


コンスタントにMADをアップしていたのは日なた猫やいざなぎといった作者で、軍魔、朝奈、枝切司などの年季のある作者が1年か2年に1回新作をzoomeにアップする、そんな環境だった。



必然的にエロゲMADが目立つzoomeという環境だからこそ日なた猫という作者が成長していったということが推測される。



話を戻すが、私が最初に見た日なた猫のMADは【MAD】電気信号と恋についての考察(仮)である。これは戯画のバルドスカイをテーマにしたMADであり、当時の私は驚愕した。
それまでに日なた猫と絡みがあった私だったが、「ただ、何かよくわからんけど自分の動画にコメントしてくれる気のいいおじさん」という認識だったのである。
そんな気のいいおっさんが突如、自分には絶対作れそうもない静止画MADを軽々と作っていたのである。
ちなみにこのMADについていえば、決して今見ても全く遜色なく恰好いいと言える出来になっている。



恰好いいMADが作れたのも当然。zoomeではあまりアップしていなかったが、日なた猫のMAD作者歴は2008年と遡り(ニコニコの動画より。本当はもっと前かもしれない)
それまでに何作も静止画MADを作ってきた作者だったからである。


ここで、日なた猫MADの特徴を紹介していきたいと思う。


日なた猫の作風と言えば、いくつかあるが、中でも大きいのがテキストに沿ったボリューム感のあるストーリーMADという部分である。
日なた猫は大体、一作につきテキストに満足がいかないと没にしてしまったり数か月かけてテキストを練るほどの徹底ぶりを見せる。伝統工芸士とも言えるべき熟練ならではのこだわりが細部に光る、そんな格式あるたたずまいを携えたテキストがあるのもこの期間がなせる業だろう。
また、セリフを言うキャラクターや場面に沿ってテキストのフォントを変える等のこだわりも私としては感慨深いものを感じざるを得ない。




日なた猫MADのテキストの特徴を大きく三つに分類すると、幹テキスト、セリフテキスト、単語テキストに分類できる。
幹テキストはストーリーの根幹を追わせるテキスト、セリフテキストは登場人物のセリフ、単語テキストはストーリー上、重要な単語を記載したものだ。
単語テキストにはきちんと説明を長文で入れることにより未見者でも高画質をコマ送りにしてみることで、単語の意味が分かるという日なた猫ならではの配慮が加えられているケースも多い。


この三つのテキストを上手くMADに取り入れることで、まるで、そのエロゲをやってもいないのに自分はもうやり終わった後なのではないかという謎の感動を生み出してくれるのである。




さて、日なた猫のMADのもう一つの特徴と言えば。シェイプである。
シェイプレイヤーを使ったエロゲMADは意外にも少ない。
特に日なた猫が好んで使うやり方について言えば、人物のシルエットや物をシェイプで作ることで自らストーリーに関係ある素材まで作り出してしまうというテクニックが光る。
このテクニックをかつて私が聞いたところ一つのシェイプを作り出すのに大体ミリからマイクロの単位で調整しているという。
どこまでも尽きることがない日なた猫のこだわりに私は驚きを隠せなかった。





そろそろ、日なた猫MADについて語ることも尽きてきた。ちなみに私が好きな日なた猫MADは「【MAD】電気信号と恋についての考察(仮)」「【MAD】Arrow of Love」「【MAD】HAPYMAHER」である。
特に「【MAD】Arrow of Love」の影響力は凄まじく、原画も何度もこのMADを見ていることがツイッター上で判明した。


ちなみに余談であるが、日なた猫が先日開催されたイベントの朝奈MADを呟いたところ一瞬で原画に補足された上、自分のMADでもないにも関わらず数十のリツイートがされたことからも日なた猫がいかに界隈に影響を与えている人物かということがうかがい知ることが出来る。


この「【MAD】Arrow of Love」、実はもう一つ秘密があり、私はコマ送りにして見た結果、分かったことなのだが、0:45でパンチラをしているのである、しかもパンツの部分について言えば、グローの加減なのかそれとも発動した日なた猫の配慮なのかきちんと股間部に白い光が加えられている。こだわりがここまで来るともう視聴者に対しての配慮というレベルではなく、本当にエロゲMADや原作を愛しているということが伝わってきて私は涙なしでこのMADを見ることができない。



以上で、日なた猫というMAD作者について大体を語り終えることができたと思う。
ストーリー系のエロゲMAD作者は本当に貴重な存在でいわば絶滅危惧種に近い。
そんな絶滅危惧種に近い彼だからこそ、独特の進化をしてきたのであろう。
エロゲMAD作者の生態は面白い、そう感じさせてくれる彼にはこれからも新たな作品を期待するとともに今後の更なる進化を期待し、結びとしたい。
(この記事に一部、誇張表現があることをお許し頂きたい)


(2016年5月29日 Pluvia)